「振られたと言う割には嬉しそうですね」
椿は沖矢とコナンの三人でお茶をしていた。二人は一応、協力してくれたのだからその報告をしに来たのだ。ついでに借りていた本を返すことも忘れない。
「よく分からないですけど、今がだめみたいなのでもう少し待ってみようかなって」
「あー、なるほど……」
コナンは何かに納得したようだった。
「ですが椿さんはいいんですか? いつになるかも分からないんでしょう?」
「いいんです。もともとは無理だって思ってましたし」
「……コナン君、頑張らなくてはいけませんね」
「えー、何の話? 僕よくわかんない。そう言う昴さんはどうなの?」
「もちろん僕も全力を尽くしますよ」
コナンと昴の会話はよく分からないことがある。椿はぽかんとしたまま紅茶を啜った。今日も絶品である。
「快斗君、この前はチケットありがとう」
「おう、どうだった?」
「宝石すごく綺麗だったよ」
「いや、そうじゃなくてさ……」
快斗の言葉が尻すぼみになる。椿は安室とどうなったのかが知りたいのだ。小五郎の付き添いで安室が美術館に現れると知っていたからこそ、彼女にチケットを渡した。椿と本物の安室が対面したところまでは確認したが、予告のこともあってその後のことが分からないから聞いているというのに。しかし快斗が安室のことを知っているのも変であり、下手に口が出せない。
「でもキッドが宝石を盗むところは見られなかったな」
「……うん」
「あと前に話した好きな人もそこに来てたみたいで」
「へえ、それで?」
「好きだって言えた……あれ、言ってない?」
慌てる椿の声は明るい。そう悪くない結果だったのだろうと快斗は安心する。
「毛利さん、こんにちは。お仕事中ですか?」
「ああ椿さん。ちょうど終わったところです。何だかあの小僧と仲良くしてもらってるみたいですみませんね」
「そんな、私のほうがお世話になってるぐらいですよ」
「あいつが世話になってるお礼じゃないですが、何か困ったことがあればいつでも言って下さい。今度こそ、この毛利小五郎が華麗に悩みを解決して見せます!」
「ふふ、ありがとうございます。でも、あのとき毛利さんが安室さんに連絡してくれたから助かったんですよ」
あのときもしも小五郎が依頼を受けてくれていたら、また違った未来だっただろう。安室との出会いは偶然が積み重なったものだ。辛かったこともあったが、それも含め大事にしたい。