エイリークはルネスを脱出した後、フレリア王国の助力を得ていた。ルネスの同盟国のフレリアもまた、グラド帝国からの攻撃を受けている。王宮に戦火は及んでいないらしいが、楽観的に考えることもできない。今後のことを両国で話し合うため、レンバール城を攻略したルネス軍はフレリア城へ向かった。

 フレリア城に着くとレネは客間に案内された。エフラム、エイリーク、そしてフレリア王族で会議をするらしい。ミルラも参考人としてエフラムについて行った。
 静かな空間、綺麗に整えられたベッド。見慣れているはずのものが、今のレネにとっては非現実に感じられた。窓から優しい光が差している。レネは吸い寄せられるようにベッドへ倒れ込んだ。

 ノックが鳴るまでレネが目を覚ますことはなかった。重い瞼を無理やり持ち上げる。まだ疲れが完全に抜けたとは言えないが、甘えるわけにもいかない。返事をして扉のほうへ歩くが、足取りは重い。ドアを隔てて待っていた人物を見て、レネは頭を覚醒させた。
「エイリーク王女……」
「お疲れのところ、すみません。今後のことが決まったので皆さんに説明を……」
夢見心地はお終いということだ。戦争という現実が一瞬でレネを包む。

 グラドの目的は、五つの国それぞれで守っている聖石の破壊。聖石は魔物から大陸を守る守護の力があると伝えられている。グラド、フレリアの二つは破壊された。残る聖石はロストン聖教国、ジャハナ王国、ルネス王国の三つ。エイリークはロストン、フレリアの王子であるヒーニアスがジャハナ。それぞれ使者となり同盟の約定を目指すことになった。

「エフラム王子はルネスへ?」
「いえ。ルネスは制圧されましたが、聖石を安置している場所には簡単に入ることができないようになっています。ですので兄上は……グラドを攻めると」
エフラムはフレリア王の前で「帝都を制圧して戦争が終われば聖石を守る必要もなくなる」と言ったそうだ。
「何て言うか……想像できるわ」
エイリークは目を丸くしてレネを見つめた。彼女の瞳の中のレネは首を傾げている。
「あっ、すみません。気にしないで下さい。それで、その……兄上のことをよろしくお願いします」
レネは頷いた。エイリークに頼まれずとも、エフラムと共に行くつもりだったのだ。行き先がグラドというのには驚いたが、迷う理由にはならない。だから了承したのだが……。
「こんなことを言っている場合ではないかもしれませんが……わたしとも仲良くしていただけると嬉しいです」
 エイリークは綺麗にお辞儀をして去って行った。残されたレネは、エイリークの言う“よろしく”の意味を考えて冷汗を流した。