9話
私とオディリアさんのヤケ食いパーティは思っていた以上に盛り上がって、食堂のネロに追加のお菓子がないかうかがいを立てるほどだった。
オディリアさんは目を腫らしていたけど、私の部屋を出るときにはすっかり元通りで、こういうときに魔法はいいなと思う。
オディリアさんの見送りをしようと中庭を二人で歩いていると、今まで散々話題の中心だったフィガロが現れた。……実はこれ、ちょっと予想していた。フィガロは前に私がオディリアさんとお茶会をした後もタイミングよく声を掛けてきたし、探るようなことを言われたから。私から見ればフィガロの矢印は曲がりなりにもオディリアさんに向いている。フィガロはわかりづらいところもあるけど、これに関してはどちらかというとわかりやすい。
「二人とも仲良しだね」
まさか、私に嫉妬しているなんてことはないだろうけど。本当にないと思うけど、視線が痛い。
「オディリアさんに雨の街のお土産をもらって、それから部屋でお茶会してました」
「へえ。いいな、今度は俺も混ぜてよ」
「……それはちょっと」
「もしかして俺がいたらできない話?」
そうですよ! と叫びたくなるのを堪えてフィガロのことは睨みつけておいた。オディリアさんはフィガロを無視して箒に跨ろうとしている。
「あ、ちょっと待ってオディリア、送っていくよ」
「いえ、大丈夫です。晶さん、今日はありがとう」
「こちらこそ!」
オディリアさんはフィガロが箒を出すのも待たずに飛び立ってしまった。フィガロはどんな顔をしているのかと思って恐る恐る隣を見て見ると――
「え……」
笑ってる。……いや、にやけてる。片手で口元を覆っているけど、隠しきれてない。
「ねえ、賢者様」
「……何でしょうか」
ちょっと嫌な予感がしつつも、私はフィガロが答えるのを待つ。
「俺って愛されてると思わない?」
「……はあ?」
愛? 愛されてる? あれだけオディリアさんを悩ませていた人が、こうもあっさり口にする。どうして私の前で言って、オディリアさんの前では言わないのか。呆れすぎてわなわなと拳が震えてきた。フィガロは何もわかってないようで「え?」と目を見開いている。
「俺、何か変なこと言った?」
「い、いま……愛って」
フィガロは自分でも信じられないというような、ポカンとした表情で固まった。
「いや……今のは違う。そういうのじゃなくてさ、」
「違いません。言いましたね」
「いやいや、ほんとに違う。ただ、オディリアが俺のことでいっぱいいっぱいになってるのがかわいいって……」
「今すぐオディリアさんを追いかけてください。そして、愛されてるとでも何とでも」
「……まあ、追いかけるのには賛成するよ。また大怪我されてもたまらないし」
フィガロは私から逃げるようにして飛んで行った。あの速さならすぐにでもオディリアさんに追いつくだろう。
それから後日、私はオディリアさんにそれとなくあの日のことを聞いてみた。けど、やっぱりというか予想通りというか、フィガロは何も言わなかったみたいだ。もちろん二人には二人の付き合いかたがあるだろうし、私からオディリアさんに言うことはしない。今まで通り、オディリアさんが悩んでいるときは話を聞くだけだ。でも欲を言うと、私がこの世界にいる間に少しでもいいから進展してほしい。二人の友達としてはそう思うのだ。